46.ストレスによる頭痛
保健師便り2022.03.01 247957view
皆さんお元気にお過ごしでしょうか。
3月は季節の変わり目や、環境の変化のストレスによって頭痛が起こりやすい時期でもあります。
現在日本人の3、4人に1人が頭痛を持っているといわれています。
頭痛は様々な原因で起こりますが、今回は「ストレスによって引き起こされる緊張性頭痛と片頭痛」に着目してお話しします。最近ではコロナウイルス感染症の蔓延によって、先の見えない状況からストレスをためてしまう方が少なくありません。ストレス対策を知って頭痛とうまくつきあっていきましょう。
<頭痛の種類>
頭痛には一次性頭痛と二次性頭痛があります。
<一次性頭痛>
一次性頭痛は、原因となる病気がない頭痛であり、緊張性頭痛、片頭痛、その他に分類されます。
緊張性頭痛は一次性頭痛の中で最も多い頭痛であり、首・肩のこりや精神的ストレスなどによって起こります。非拍動性で圧迫されるような、または締め付けられるような痛みを感じます。また、首筋の痛みや非回転性のめまいなどを伴うことがあります。朝は軽く、疲労の蓄積によって悪くなることも特徴ですが、睡眠の質が悪いと、起床時から自覚することもあります。
片頭痛は、ズキズキとした片側性や両側の拍動性の頭痛で、脳の血管が拡張し炎症を起こすことによって起こると考えられています。片頭痛は、閃輝暗点※などの前兆を伴うことがあります。また、頭痛が起こる前に、頭痛が起きそうな予感や眠気、疲労感などの予兆を感じる方もいます。女性に頻度が高く、月経前に多くなります。吐き気を伴ったり、頭痛の程度が強く、寝込んでしまうこともあります。
※閃輝暗点(せんきあんてん)…最初に視野の中心部にギザギザした光が見え、次第にそれが広がり、光の内側は暗点となって周囲のものが見えなくなります。
緊張性頭痛と片頭痛の両方を合併する混合型頭痛もあります。
また、頭痛の治療薬を過剰に内服することで、薬の効果が弱くなり、さらに頭痛がひどくなるという悪循環が起きる薬剤の使用過多による頭痛もあります。連日頭痛薬を内服している方や薬が効かなくなってきたという方は、自己判断で服用せず医師に相談しましょう。
<二次性頭痛>
二次性頭痛は、何らかの原因(器質的疾患)によって引き起こされる頭痛です。
突然今までに経験したことのない激烈な痛みや、発熱、意識がはっきりしない、麻痺(しびれ、感覚がない)や複視(1つの物が2つに見える)などの症状がある場合は、クモ膜下出血や脳梗塞のような緊急性のある病気の疑いがありますので、一刻も早く医療機関にかかりましょう。
二次性頭痛で慢性的な頭痛を起こす疾患としては、副鼻腔炎、下垂体炎、低髄液圧症候群、髄膜炎、硬膜炎、睡眠時無呼吸などがあります。[1] 頭痛薬が効かない、頭痛の頻度の増加などがある場合は、神経内科などに受診し検査(CTやMRIなど)を受けられることをお勧めします。
<ストレスによる頭痛のメカニズム>
緊張性頭痛と片頭痛はストレスによって引き起こされることがあります。ストレスがかかると、筋肉が過度に緊張したり、脳内の痛みの調整がうまくできない状態となり、緊張型頭痛が起こると言われています。
また片頭痛は、脳内のセロトニンという物質が、ストレスなどの原因で一時的に増加して血管が収縮し、正常化に伴い血管が拡張することが原因とする説もありますが、まだはっきりわかっていません。[2]ストレスから解放された後にも血管が拡張して片頭痛を起こすことがあります。
またストレス解消として、片頭痛の誘因(寝すぎ、喫煙、飲酒、チョコレートを食べるなど)となる行動を知らず知らずに行っている場合があります。
頭痛の対策を知って、ストレスをためずにうまく対処していくことが大切になります。
<緊張性頭痛と片頭痛の対策>
①緊張性頭痛の対策
緊張性頭痛は首や肩回りの筋肉の緊張をほぐすことが効果的であるため、入浴、熱いタオルで首や肩回りを温める、ストレッチ(肩回し、背伸びなど)、マッサージなどがお勧めです。
また長時間同じ姿勢をとったり、姿勢が悪いと筋肉が緊張してしまうため、スマートフォンやパソコンを使用する時は気をつけましょう。睡眠不足が影響するため、良質な睡眠をとりましょう。
☆一般社団法人日本頭痛学会から効果的な頭痛体操が紹介されていますので、ホームページを検索しご活用されることをお勧めします。
薬物療法は、筋肉のこりをほぐす筋弛緩薬、抗不安薬、抗うつ薬、消炎鎮痛薬、漢方薬などが用いられています。(医師と相談してください)
②片頭痛の対策
片頭痛は、欠食、空腹、睡眠不足、寝すぎ、まぶしさ、におい、気圧、喫煙、飲酒などが誘因となる可能性があるため注意しましょう。
また、誘因となる食べもの(チーズ、チョコレート、赤ワイン、化学調味料など)を控えましょう。
片頭痛が起こった場合は、余計な刺激を与えないよう、静かな暗い場所で横になりゆっくり休みましょう。痛む部位を冷やすと拡張した血管が収縮し楽になります。
薬物療法は、頭痛の前兆があった際に内服する薬や、予防薬、発作時の薬、注射薬などがあります。(医師と相談してください)
気圧による頭痛に関しては、以下の保健師便りをご参考にしてください。
35.『気象病』に備えるhttps://www.keihin.or.jp/204/
③頭痛ダイアリーをつける
上記のように頭痛は人それぞれ誘因が違いますので、自己分析が大切になります。頭痛で悩んでいる方は頭痛ダイアリーをつけて分析しましょう。
ストレスについては、「どのようなストレスがあったか」、「ストレスの程度」、「頭痛の強さ」や、それに対して「効果があった対処法」などを記入しましょう。どのようなストレスがどの程度影響しているのかが分かると、その対象を避けられる場合は避けたり、ストレスを軽減するための対策を考えることができます。色々な対処法を試し、自分に合った方法を見つけていきましょう。
☆記載用紙は、一般社団法人日本頭痛学会などからフォーマットが出ており、ダウンロードができますので、ホームページを検索しご利用されることをお勧めします。
<ストレス対策>
ストレスによる頭痛を引き起こさないために、自分に合ったストレス対処法をいくつか持ちましょう。
①3つのR
ストレス対策は、「3つのR」を意識すると良いと言われています。レスト、レクリエーション、リラックスの英語の頭文字をとっており、ストレス対策の大切な行動となります。
ストレスを完全になくすことはできませんが、ストレスをためないように気をつけることはできます。3つのRそれぞれに対して自分に合う方法を見つけ、ストレスに対処しましょう。ストレスは自分が気付かない間に蓄積し、時間がたってから頭痛などの症状となって出てくる場合があります。特に真面目で頑張りすぎてしまう方は、意識して気をつけましょう。
ストレス対策に関して、以下の保健師便りもご参考にしてください。
27.強いストレスの中でもいきいき働く力https://www.keihin.or.jp/66/
33.マインドフルネス瞑想https://www.keihin.or.jp/79/
②相談する
ストレスとなる事柄については、関係者や専門機関に相談し、対策や見通しを立てることでストレスが軽減されます。一人で悩まず相談することで、客観的な意見を取り入れ、問題解決に近づくことが出来ます。問題解決に繋がらない場合でも、人に話すこと自体がガス抜きとなり、それだけでもストレス対処になります。
厚生労働省では、様々な悩みに対して相談機関・相談窓口を公開しています。
こころの耳 相談窓口案内https://kokoro.mhlw.go.jp/agency/
<頭痛、ストレスの受診科>
頭痛は怖い病気のサインであることもあるため、自己判断せず医師に相談し診断を受けましょう。頭痛の相談は、神経内科や頭痛外来、脳神経外科など、頭痛の専門医がいる医療機関の受診をお勧めします。その際、頭痛ダイアリーがあると医師の診断に役立ちます。また、ストレスによる症状でお悩みの方は、ストレス外来を受診し相談されることをお勧めします。医療機関に相談して頭痛とうまくつきあっていきましょう。
<引用文献>
[1]女性の健康推進室 Wellness Labo ウェルネスラボ(厚生労働科学研究費補助金を受けた研究班で運営)「頭痛」(公開日2016.5.17)https://w-health.jp/woman_trouble/headache/ (アクセス日2022.2.1)
[2] 健康の森日本医師会ホームページ「ストレスが原因?」 (アクセス日2022.2.1)
〈参考文献〉
1)一般社団法人日本頭痛学会ホームページ(アクセス日2022.2.1)
2)一般社団法人日本神経学会https://neurology-jp.org/index.html (アクセス日2022.2.8)
この記事は、神奈川県川崎市高津区にある健診機関「京浜保健衛生協会」が執筆・監修しています。人間ドック/巡回健診/女性のための健診/がん検診など、健診でお悩みの際はお気軽にご相談ください。