27.強いストレスの中でもいきいき働く力
保健師便り2018.07.03 4903view
第二次世界大戦中、ユダヤ人強制収容所の収監から生き抜いた方々の多くは、あまり長生きできなかったと報告されています。収監時の想像を絶するストレスを長期間受け続けたことによる影響という見方がありますが、実はその中でも良好な健康状態を保ち、余生を送った方もいたそうです。
医療社会学者のアーロン・アントノフスキーは、その人達の性格特性を研究し、共通の特徴を「SOC(首尾一貫感覚)」と名付け、その要素として「有意味感」「把握可能感」「処理可能感」の3つに分類しました。この3つを意識することは、ストレスに対応する能力を高めるのに役立ちます。
<有意味感> どんなことにも意味を見出す力
生活の中で出会った出来事に対して、それが自分にとって意義があり、価値があると思える感覚です。仕事でいえば、同じ仕事でもいやいやするのではなく、自然と前向きに取り組める力です。興味が持てない仕事でも「将来的に役立つかもしれない」など、前向きに取り組めるとストレスは軽減されます。
<把握可能感> 状況を把握し先を見通す力
自分の置かれている状況を理解でき、これからの見通しをある程度予測できる力です。仕事でいえば、長期に渡るプロジェクトなどでも先を見通せる力です。「あと1カ月でひと息つき、余裕ができるな」など、希望を見出せると大変な状況でも息切れせずに頑張ることができます。
<処理可能感> きっとうまくできると確信する力
出会う出来事に対して、なんとかできるだろうと思える感覚です。仕事でいえば、新しい課題と向き合ったときに「今までの経験や周囲の助けなどがあるのだから、うまくできるだろう」と、ある程度楽観的に思える力です。少しずつでも課題を乗り越えて、自信がついていくと処理可能感は高まります。壁にあたったときは、早め早めに周囲に相談し、援助を求めましょう。
ストレスに対応する能力を高めることへの特効薬はありません。一日一日、起こることをどのように捉えていくかで、ストレスに対応する能力を高めていくことができます。
SOCは、育った環境や人生経験によって獲得していくものです。社会的つながりが多い人程、SOCが高いという研究もありますので、一人でなんとかSOCを高めていくというよりは、人との関わりの中で高まっていく、人から人へ伝わる知恵とも言えると思います。お互いのSOCを高め合える職場を目指したいものですね。
付録として、ご自身のSOCを知るための質問票をつけます。自分自身への気づきや、セルフケアにお役立て頂けましたら幸いです。
この記事は、神奈川県川崎市高津区にある健診機関「京浜保健衛生協会」が執筆・監修しています。人間ドック/巡回健診/女性のための健診/がん検診など、健診でお悩みの際はお気軽にご相談ください。