34.ご存知ですか?『風疹』〜成人男性に急増中〜
保健師便り2019.02.03 117335view
2018年は風疹の届出数が大幅に増加した年となりました。
2018年12月9日までに2,586例の届出があり、そのうち2,526例は7月23日以降の報告です。2017年の届出数93人と比べると、夏頃から非常に大きな流行となったことがわかります。
これは、2年間で16,000人を超える罹患者を出すことになった2012年の累積報告数(2,386例)を上回っています。患者の多くは、30〜50代の男性で、首都圏を中心に報告されています。
風疹ウィルスによって引き起こされる急性の発疹性感染症です。風疹への免疫がない集団において、1人の風疹患者から5~7人にうつす強い感染力を有します。
感染経路
咳やくしゃみで飛び散った細かい水滴の中にいるウィルスを吸い込むことで感染する“飛沫感染”と、ウィルスが付着した手で口や鼻に触れることによる“接触感染”です。
飛沫は水分を含んで重いので、罹患者の近く(1~2m以内)で感染しやすくなります。
好発年齢
以前は、集団生活に入る1~9歳頃(1~4歳児と小学校低学年)に多く発生が見られていましたが、近年は、風疹の予防接種を受けていない20代以上の成人男性で罹患者の70%を占めています。
潜伏期間
2~3週間(平均16~18日)
症状
主に発疹、発熱、リンパ節の腫れが認められ、5日間程度続きます。ウィルスに感染しても明らかな症状がでることがないまま免疫ができてしまう(不顕性感染)方も15~30%程いるようです。小児の場合は比較的軽いのですが、まれに肺炎・血小板減少性紫斑病などの合併症が2,000~5,000人に1人の割合で発生することがあります。
一方、成人がかかると、発熱や発疹の期間が小児に比べて長く、関節痛が酷いことも多くなり、1週間以上会社を休まなければならない場合もあるので軽視できません。このような症状が出現した場合には、マスクを着用し、可能な限り人との接触を避け、速やかに医療機関にご相談ください。
妊娠初期の女性が感染すると、生まれてくる赤ちゃんが先天性風疹症候群(CRS)になる可能性があるからです。
先天性風疹症候群(CRS)とは?
風疹に対する免疫を持たないまたは免疫の低い妊娠中の女性が、風疹に感染すると、赤ちゃんに白内障・先天性心疾患・難聴・緑内障などの障害が起こる可能性があります。特に妊娠初期は注意が必要です。
各妊娠週数の先天性風疹症候群(CRS)の発症確率
●妊娠4週で50%以上
●妊娠8週で35%
●妊娠12週で18%
●妊娠16週で8%
●妊娠20週以降の場合は、ほぼ障害が残らない
予防接種が最も有効です。風疹ワクチン〔現在は麻疹風疹混合(MR)ワクチンが用いられています〕を接種することによって、95%以上の人が風疹ウイルスに対する免疫を獲得することができると言われています。
また、2回の接種を受けることで1回の接種では免疫を獲得できなかった方の多くに効果が期待できます。風疹の罹患歴や予防接種歴が明らかでない場合には、ワクチン接種をご検討ください。
- ● ワクチン接種は、副反応や場合によっては重度のアレルギー反応が生ずる可能性もあります。
事前に接種時の注意事項をよくご確認いただき、心配な方は医師へご相談ください。 - ● 麻疹風疹混合(MR)ワクチンは、生ワクチンという生きたウイルスや細菌の病原性(毒性)を弱めた製剤です
ので、妊娠中または妊娠の可能性がある方、病気などで免疫力が低下している方は接種できません。また、
接種後は2〜3か月間妊娠を避ける必要があります。
風疹の抗体検査、風疹含有ワクチン接種に対する費用助成をしている自治体が増加しています。
詳しくは、居住地区の自治体ホームページ等を確認しましょう。
男女別・年齢別によって風疹の予防接種制度が違い、過去の風疹の流行時の暴露状況により、風疹ウィルスに対する免疫の保有状況が大きく異なります。平成2年4月2日以降に生まれた人は2回、公費でワクチンを受ける機会がありましたが、昭和37年度から平成元年度に生まれた女性及び昭和54年度から平成元年度に生まれた男性は受けていても1回です。
そして、昭和54年4月1日以前に生まれた男性は1回もその機会がなく、十分な免疫を持たない人達が蓄積していたものと考えられています。(下図参照)
必要です。予防接種が最も有効な予防法です。気づかずに感染していると(不顕性感染)、学校や職場全体に感染を拡大させ、妊娠中の方に感染させてしまうことがあり、生まれてくる赤ちゃんが先天性風疹症候群(CRS)と診断される可能性が生じてしまうからです。
厚生労働省は2018年12月11日、流行している風疹の感染拡大を防ぐため、2019年〜2021年度末の約3年間にかけて、これまで風疹の定期接種を受ける機会がなかった昭和37年4月2日~昭和54年4月1日生まれの男性(現在39歳~56歳)を対象に風疹の抗体検査を前置した上で、定期接種を原則的に無料で実施することを決定しました。最新の情報は、厚生労働省のホームページをご覧ください。
参考・引用資料
・国立感染症研究所(風疹) https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ha/rubella.html
・厚生労働省 健康局 結核感染症課 【ホームページ】 https://www.mhlw.go.jp/index.html
・感染症エクスプレス@厚労省
この記事は、神奈川県川崎市高津区にある健診機関「京浜保健衛生協会」が執筆・監修しています。人間ドック/巡回健診/女性のための健診/がん検診など、健診でお悩みの際はお気軽にご相談ください。