23.快適な睡眠で健やか生活
保健師便り2018.03.03 11074view
この時期、ベッドの居心地が良くて起きるのが辛いという方、あるいは、季節の変わり目に眠りづらさを感じ、転勤や就職、進学や引越しなど、生活環境が大きく変わり睡眠に不満をもつ方もいるかもしれません。気温や日照時間、さまざまな環境要因がホルモンバランスや自律神経に乱れを生じ、身体機能や睡眠・覚醒に影響を及ぼします。質の悪い睡眠は生活習慣病(高血圧、心臓病、脳卒中、糖尿病、がんなど)や精神疾患の罹患リスクを高め、かつ症状を悪化させることが分かっています。
体内時計、性差や年齢による影響を理解し、意識的に体のリズムを整え、快適な睡眠で健やかな生活を送りましょう。
未だ解明されていない部分がありますが、睡眠には、身体の疲労回復だけでなく、免疫力を増強、身体組織を修復、日中の情報や記憶を整理・定着させ、脳機能を正常に保つ役割があります。
私たちの体には、体内時計が備わっていて、その働きによって、夜には眠くなり、朝には目が覚めるように調整されています。体内時計の周期は約25時間であり、地球の自転とは約1時間のずれがあります。このズレを昼夜変化(明暗周期)に合わせるシステムも備わっています。朝の強い光は、目を通して脳に伝えられ、体内時計を早める方向に、夜に浴びる光はこれを遅らせる方向に働きます。
体内時計は、朝方になると、覚醒作用を持つ副腎皮質ホルモン(コルチゾール)の分泌を促します。副腎皮質ホルモンは、日中は体温を高く保ち、夜は体から熱を放散し、特に脳を冷やし、身体を休ませる働きをします。同時に、体内時計を調整するホルモンであるメラトニンが分泌を始め、入眠を促します。
女性の場合、月経前には日中の眠気、妊娠中には日中の眠気や不眠、出産後は睡眠不足、そして更年期には不眠になりやすいと言われています。
女性は、「月経」「妊娠・出産」「閉経」を通して、大きなホルモン変化にさらされており、睡眠の変調をきたしやすいのです。そして、男女問わず年齢を重ねると、体内時計が変化する為、早寝早起きになり、時間は短く、眠りが浅くなります。
1 )時間
●様々な研究結果から、1日に必要な睡眠時間は6~8時間が目安といわれていますが、個人差があります。目覚ましをかけず、自然に目が覚める時間に起き、充分に眠ったという実感を得られるのが理想です。
短時間の睡眠でも日中に眠気を感じることなく充分に活動することができていれば、理想的な睡眠時間を確保できていると言えます。
●活動を始めた体は15時間前後に眠りの準備を始めます。例えば、朝6時に起きたら、夜8時には眠りに就く準備に入ります。睡眠サイクルを意識してみましょう。「寝だめ」や「二度寝」は、体内時計を狂わせ、睡眠の質が低下するきっかけになってしまいますので注意が必要です。
2 )朝が重要
●毎朝決まった時間に目覚め、日光を浴びる
寝る時間が遅くなっても、同じ一定の時間に起き、日光を浴びることを心がけましょう。リズムが整えられ、時間は短くても深い睡眠をとることができます。
●規則正しい朝食習慣
朝食を摂ることで、体が目覚め、体内時計のリズムが整えられます。
3 )適度な運動習慣を
身体を動かすことは睡眠と覚醒のリズムにメリハリをつけ、寝つきを良くし、中途覚醒を減らし、熟睡感をもたらします。1回の運動だけでは効果が弱く、習慣的に続けることが重要です。早足の散歩や軽いランニングなどの有酸素運動を、夕方から夜にかけて(就寝の3時間くらい前)行うのが効果的です。激しい運動は逆に睡眠を妨げるので加減しましょう。
4 )20分程度の昼寝
20分程度の昼寝が、記憶を定着させ、仕事の効率を上げます。残業で帰りが遅く、夜間勤務で不規則、睡眠不足になりがちな場合に有効です。長すぎる昼寝は逆効果です。
5 )入浴
脳の温度が低下するときに眠気が出現しやすくなります。夕方あるいは夜に入浴し、一旦体温を上げておくことで入眠しやすくなります。深い睡眠をとるには就寝直前の入浴が良いとされていますが、寝付きを悪くしてしまう心配があります。寝付きを優先させると、就寝の2~3時間前の入浴が理想です。
6 )寝る前の刺激物を避ける
●カフェインやアルコール
コーヒー・緑茶・紅茶・栄養ドリンク・チョコレートなどカフェインが含まれる飲食物は覚醒作用があり、眠りの質を低下させます。敏感な人は就寝の5~6時間前から控えた方がよいでしょう。アルコールには体温を下げる働きがありますので、寝付きをよくしますが、3時間ほどすると、体温が上がり、眠りを妨げることにもなりかねません。
●タバコ
タバコに含まれるニコチンが刺激剤として作用するので好ましくありません。
●ブルーライトや蛍光灯
パソコンや携帯電話、タブレットなどのブルーライトを見続けると、メラトニンの分泌量が減り、覚醒を促す可能性が出てきます。寝る3時間前は控えましょう。家庭の照明でも(照度100~200ルクス)、長時間浴びると体内時計が遅れます。日本でよく用いられている白っぽい昼白色の蛍光灯は体内時計を遅らせる作用がある為、赤っぽい暖色系の白熱灯が理想と言えます。
7 )環境作り
●自分に合った寝具 ―枕・敷布団・掛け布団―
私たちの姿勢は、後頭部から首・胸にかけてと胸から腰にかけて、背骨が2つのS字カーブを描くようになっています。寝た姿勢でいちばん体への負担が少ないのは、立ち姿勢に近い自然な体勢です。自分に合った高さの枕や寝具を選びましょう。
敷布団やベッドマットは柔らかすぎると、腰痛の原因になります。反対に硬すぎると骨があたり痛みが生じ、血流が妨げられます。適度な硬さが必要です。掛け布団は保温性、吸・放湿性に富み、軽くてフィット感があるものがお勧めです。
●照明器具やカーテンで静かさと暗さ
必ずしも照明を真っ暗にするのが良い睡眠をもたらすわけではありません。自分がリラックスできる明るさを見つけましょう。
●リラックスできる空間作り
寝つきの良し悪しや睡眠の質は、温度・湿度などにも影響されます。寝室内の温度は26℃以下(布団の中は33℃前後)、湿度は50%前後が最適とされます。
●音楽や香りなどでリラックス
音楽や香りで気持ちを、マッサージで筋肉をほぐしたり、ツボの刺激、呼吸法やイメージトレーニングは眠気を誘うのには効果的です。
☆眠れないときは・・・
眠ろうと意気込むのは逆効果です。寝付けないときはいったん床を離れ、自然に眠たくなったら寝床に就くようにしましょう。床にいる時間を短くすることで熟睡感が増すこともあります。
★それでも眠れない時は・・・
寝付けない、熟睡感がない、眠っても日中の眠気が強いときは、心と体の病気のサインであるかもしれません。専門医に相談しましょう。
この記事は、神奈川県川崎市高津区にある健診機関「京浜保健衛生協会」が執筆・監修しています。人間ドック/巡回健診/女性のための健診/がん検診など、健診でお悩みの際はお気軽にご相談ください。